9. スキル向上のためのドリル
content by Ben Tan
reviewed by James O'Callaghan
ボートハンドリングのドリル
これらのドリルは操艇技術、たとえばタック、ジャイブ、ペナルティターン、マーク回航のような技術を習得するために役立つ。さらに、スタートやバランスを保つための技術も含まれる。これにより、ボートをよりよく知ることができ、またこれらのいくつかはフィットネストレーニングの2倍以上も効果がある。
・タッキング・ドリル
1艇でのタック…1人でトレーニングをする場合、タックの目標回数を20から50に設定しよう。繰り返してタックする。タック後、フルスピードまで加速したらすぐにその次のタックを始めること。
または、カウントダウン・タイマーを30秒から60秒間隔で繰り返すようにセットしてもよい。スピードを維持してタックを終えることが重要だ。通常のタックかロールタックのどちらを行なうかは風の強さによる。何回かはダブルタックも取り入れよう。
1艇での連続タック…軽風下でも、心搏が上がるドリルだ。ダブルタックを延長して、当初に決めたタックの回数――仮に20回としよう――を終えるまで止まらずにタックを続ける。パートナーがいるのなら、どちらが先に20回のタックを完了するか競争してみる。
2艇でのタック…パートナーとペアーを組んで反対タックでスタートする。交差した後、後になったボートは、ダミー・タックやダブルタックをしたり、タックを完璧に行なうことによって前のボートに追いつくように頑張る(図9-4)。
リードしたボートはカバーリングするようにする。後のボートは、この練習がスピード競争や風のシフトを練習とならないように、20秒以内に1回タックをしなければならない。2艇でのタックは、先頭のボートが追い抜かれた時、あるいは前もって決めた時間を過ぎた時に終わる。次のラウンドでは、前の練習で勝ったボートが後にまわる。
ホイッスルでのタック…これは大勢のグループ練習で行う。同一タックで、風に対して同じ高さで一列に並ぶ。ホイッスル(グループのうちの1人あるいはコーチが吹く)で、シートを引き込みクローズ・ホールドでセイリングする。ホイッスル1回で1回タックし、ホイッスルが2回鳴ればダブルタックを1回行う。

図9-4 2艇でのタックで交差するボート
・ジャイブのドリル
1艇でのジャイブ…1人で練習している場合には、目標を――仮に20から50回としよう――設定する。風の強さに応じて、通常のジャイブあるいはロールジャイブを行う。そしていくつかダブルジャイブを取り入れる。
1艇での連続ジャイブ…非常に軽風の場合にも、連続ジャイブは身体的に負荷のかかるドリルとなる。1回ジャイブして、そのすぐ後に続けてもう1回、その後にさらにもう1回というように自分が設定したジャイブ回数、たとえば20回を終えるまで続ける。非常に軽風の場合や完全に穏やかなコンディションでは、ほとんど真直ぐのコースをセイリングできる。片側のデッキから反対側のデッキへとジャンプを繰り返すことによりロッキングするからだ。これはプレッシャーのかかる状況下で行うティラーとメインシートの持ち替えのためのよい練習となる。
ホイッスルでのジャイブ…これは大勢のグループ練習で行う。ビームリーチで一直線に並ぶ。ホイッスルで、ベアしてランニングする。1回のホイッスルで1回のジャイブ、ホイッスルが2回鳴ればダブルジャイブを1回行う。
・720度および360度ドリル
720度および360度周回の競争…これにはマークは必要ない。セイルリングのどこからでも720度あるいは360度のターンを始めよう。時計回りならびに反時計回りの両方のターンをあらゆるコンディションで(特に強風で)練習する。
だれが一番早くターンを終えるかを競争することでこの練習はもっと面白くなる。2挺身以上離れて決めたセイルのポイントでセイリングし、ホイッスル(あるいは口笛)で一緒にターンを始める。
ターンを終えたら大きな声で叫び、グループに誰が勝ったのかを知らせる。
このトレーニングドリルのポイントは、ボートの操艇技術を向上させるために可能な限りすばやくターンを終えることである。しかし、レースでのペナルティターンは、ターンを早く終えることよりも、ロス(遅れ)を少なくすることを心掛けるべきだ(第4章参照)。
短いコースでのターン…短いコースをセイリングする場合、全てのマークを回航した後に360度あるいは720度のターンを1回する。これでフィットネスが向上する。ここでのポイントは、最短の時間でターンを行うことではなく、できるだけ他艇から遅れないことである。
短いコースでペナルティターンを加える別の方法として、先頭のボートに全てのマークで720度あるいは360度のターンをマーク回航した後すぐに行わせる方法がある。これで先頭が変わり、フリートは一緒にいることができる。
・短いコースでのマーク回航
いくつマークをもっているかによるが、コースを作る方法は、図9-5に示したようにいく通りもある。セイラー全員がおのおののマークで自分のセイルを再調整しなければならない。こうした短いコースでは、1艇よりも複数のボートでトレーニングするのがよい。一番遅いボートが最初に、そして一番早いボートは最後にスタートする。
代わりに、コーチがスタートラインを決めることもできる。コースを回りながら互いに追いかけあい、コーチがそのドリルを終了するまでできるだけ多くのボートを追い抜く。全員が上マークと下マークでセイルを再調整しなければならない。上りでは最低でも5回のタックを行い、それぞれのマーク回航後すぐに720度あるいは360度のターンを行うことで、短いコースも十分面白くなる。

図9-5 マーク回航を練習するための様々なコース
・スタートラインでの操艇ドリル
パーキング…この「練習」は、高い集中力を必要とするドリルの後の休憩として使うことができる。1つのマークまで上っていって、ボートが前に1インチも出ないように止める。ブームが十分外に出してセイルに風が入らないことを確認する。さまざまな潮流の中で試してみよう。
後ろにセイリングする(バックする)…まっすぐ風位に立てて、ブームを外側に押す(図9-6)。マークの周りを移動することで、後ろ向きでステアリングすることに慣れよう。十分なコントロールとともに、逆方向に素早くギアを入れる方法、そしてクローズ・ホールドの方向に素早くギアを入れ替える方法を習得する。このスキルは、スタートライン周辺でのマニューバリング、あるいは風の強い日に止まってしまった場合に有効だ。

図9-6 後ろへのセイリング
スカロッピング…この動作によって、風上に向かって横に「漂う」ことを可能にし、風下側にスペースを作ることができる。このスペースはスタートで加速するためのルームをもたらし、また風下艇からの裏風を受ける可能性を減らすことができる。
スターボードタックで、マークの隣に止まり、風位とクローズ・ホールドの間にくるようにボートの角度をあわせる。セイルの遠いサイドにいくぶん風が入るようにブームを外に押し出し、ティラーを繰り返しスターボード側に細かく当てるように動かして(jabbing)、ボートがタックするのを防ぐ(図9-7)。この場合は、ラダ−を使ってボートを前に進めるのではなく、ベアするために使っているので、ルール違反ではない。こうすると、風上に向かってゆっくりと漂うことになる。
スタート・停止ドリル…レーザーセイラーならだれしも、スタートライン直後のボートスピードを夢見ている。最前列の前に割って入ることは、シフトとともにタックをする自由と上マークで上位に立つこと(間違ったタックで減速してしまわない限り)を意味する。加速に加えて、ボートを減速させることもスタートラインでの大切なスキルだ。たとえば、最前列の隙間に入り込み、バウがラインを越えて出ないように瞬時に停止するような場合だ。
1人で練習している時には、異なる風のコンディションで加速・減速を交互に練習する。軽風の場合、ヒールさせてからシートを引き込む直前にボートをフラットにして押し出してやる。
グループならば、ボートの間隔を2艇身あけて、風に対して同じ高さでクローズ・ホールドで一列に並ぶ。ホイッスル(あるいはボートが4艇よりも少ない場合は口笛で)で、シートを引き込み、できるだけすばやく加速する。次のホイッスルでは、ブームを押し出してできるだけ早く停止する。

図9-7 スカロッピング
・バランスを保つドリル
次に示す4つのドリルはバランスを向上させることを目的としている。これらのエクササイズでは水の中に落ちやすいので、寒い天候でトレーニングをする場合は注意しよう。
立ち上がる…セイリング中のいつでも、サイドデッキに立ち上がりそこからセイリングを始める。これはバランス感覚を養い、スタート前やレース中に風を見るために立ち上がった際、落水して恥ずかしい思いをするリスクを減らす。
ウィンドサーフィング・タック…ボードセイラーにわれわれもウィンドサーフィンできることを示すチャンスだ。クローズ・ホールドでセイリングを始め、立ち上がる。メインシートをクリートし、ボートを少しだけヒールさせ(これは向かい側にランニングするのに十分な時間をくれる)そしてティラーを押し出す。
リグの近くに体重をかけながら、マストの前を回って反対側にすばやく走り込む。反対側にのったらティラーエクステンションとメインシートをしっかり持ち、再びボートをコントロールする(図9-8)。

図9-8 マストの前を走って横切りながらのウィンドサーフィン・スタイルのタック
ウィンドサーフィングジャイブ…これもボードセイラーを驚かせるチャンスである。ランニングでセイリングしながらトランサムの端に立つ。ベアしてブームブロックの後からメインシートを引き込むことでジャイブする(図9-9)。

図9-9 セイルの後ろに立ちながらのウィンドサーフィン・スタイルのジャイブ
帰路でのロックンロール…これも身につけておくと役立つスキルの1つで、特に海で立ち往生してしまいたくない場合に役立つ。風のない日は、帰る際にこれを練習する。センターボードを半分、ラダ−は全部上げてしまう。
次に、ブロックトゥブロックの位置から50センチぐらいのところでメインシートをブームにクリートし、マストの前に立ち、セイルを扇ぐようにボートを左右に揺らす(図9-10)。ヒール角度を調節することによってステアリングする。

図9-10 マストの前からボートのロッキング
・グループゲーム
ここで示す2つのゲームは、単調なトレーニングの息抜きに最適で、セイラーは比較的楽なセッティングで、楽しみながら連係してセイリングする機会ができる。
リーダーを追いかける…一番遅いボートがリーダーになり、遅い順に続く。リーダーの後ろに一列になり、リーダーが行なう動作すべてに従う。自分のすぐ前のボートに集中し、間隔を一定に保つ。グループが上達したら、リーダーはタック、ジャイブ、停止、加速を短い間隔で行うことができるようになる。
ボールタッグ(鬼ごっこ)…4つのマークを使って、一辺約100メートルの四角形を描く。全艇がこの四角形の中に入る。1人がボランティアで「鬼」になりゲームを始める。そして別のボートにボールを投げる。当たられたボートは今度は「鬼」となり一番近いボートに向かっていく……これを繰り返す。