9 スキル向上のためのドリル
content by Ben Tan
reviewed by James O'Callaghan

 
 有効なトレーニング・セッションのためには、まず、一日ごとに明確な目的とエクササイズ(練習課題)およびドリル(反復練習)を設定したトレーニング全体計画が必要だ。セッションの間は、この計画に執着し、弱点を克服し設定した目的を達成するように一所懸命練習すること。

 有効かつ創造的なドリルは、セイリングスキル(技能)を向上させるための確実な方法である。本章では、水上でのドリルの最適な方法とともに、世界のトップセイラーが実践している、基本的ではあるがとても効果的ないくつかのエクササイズを解説する。しかし、けっして実験的な試みを恐れてはならない――さまざまなドリルの要素を組み合わせることによって、自分のトレーニングニーズに沿った練習メニューを作ろう。

 トレーニングセッションから最大限の結果を得るために

 成功するために必要なのは、単に水上で長い時間過ごすのことではなく、むしろトレーニングの効率を高めること、すなわちそれぞれのトレーニングセッションから最大限の効果を得るようにすることだ:
* 各々のドリルに明確な目標を設定すること。各スキルを要素に分類し、それぞれの要素ごとに自分の能力を判断する。たとえば、タック技術を高めたければ、タックの中でどの要素を改善する必要があるか考えてみよう。それが、身体を移動するスピードなのか、それともタックの後ボートをフラットにすることか、あるいはティラーとシートの持ち換えなのか……。こうしたさまざまな要素をそれぞれ10段階で格付けすれば、自分が上達したかどうかを評価できる。これは特に一人でトレーニングしている場合に、集中度を高める手段として有効だ。
* 新しいスキルを習得する場合、疲れていない時に練習すれば素早く習得できるだろう。その後上達したら、プレッシャーのある状態で反復練習することで難易度を高めていく。たとえば、マーク回航を練習する際には、コースの大きさを徐々に短くしていくなどの方法をとる。
* 自分の技術・ボートハンドリング・セイルセッティングを分析するために、ビデオカメラはとても有効だ。コーチなどに、自分の動きを撮ってもらおう。違った視点から見ることで、自分だけでは決して気づかなかった間違いに気がつくはずだ。
* 集中的なトレーニングセッションは、同時に格好の身体的ワークアウトとなるだろう。フィットネスの向上のためは、陸上トレーニングよりもセイリングの方が、セイリング特有のフィットネス強化ができるという点で優れている。同様に、模擬レースはトレーニングドリルよりももっとレースに特化しているわけだから、各セッションを終了する際にはコースを回るレースで締めくくるようにすればよいだろう。
* トレーニング記録簿をつけて、レースの分析、レース中あるいはトレーニング中の失敗を記録する。最も重要なのは、これらの失敗や弱点を克服するためにどうするかを記録することだ。また、自分の強い部分を補強するために上手くできた点を書きとめておくこと。この記録はあとで参照するためというより、記録することによって、盲目的にトレーニングするのではなく、自分が何をしているかについて考えるようになる。そのほかに記録簿に書いておくこととしては、体重・フィットネスレベル(自身の進捗を把握するために)の連続記録、風のパターン・天気・潮流の状況、コーチから指摘された事項、読んだ文献、他のセイラーやコーチとのディスカッション、などがある。また、全体的なトレーニング計画を記載した年次計画書(15章参照)を、トレーニング記録簿の末尾に挟んでおくこと。これにより全体像を常に思い出せる。
* レーザーのレースは自分1人で闘うものだが、トレーニングはチームで実施すべきだ。1人かそれ以上のトレーニングパートナーがいれば、1人で練習するよりもより多くを学ぶことができる。ジムでのトレーニングも同様だ。速くなるためのヒントを共有し、お互いに助け合うことによって、トレーニンググループ全体として上達するだろうし、セイラー1人1人にとってもレース中の脅威が少なくなる。