サイドマークと下マーク


 他艇と一団となってジャイビング・マーク(サイドマーク)あるいは下マークを回航する時には、インサイド・オーバーラップを保持することが大きな優位をもたらす。したがって、これらのマークを回航する際の戦略は、マーク回航を規定するルールが中心となる。

2艇身ゾーンでのルームの権利
 マークの周囲にボートの長さの2倍の半径で描いた円内が2艇身だ。1艇がこのゾーンに入った時のオーバーラップの有無によって、だれが最初にマーク回航するかが決まる。オーバーラップがあれば内側にいるボートがマーク回航のためのルームを獲得する。オーバーラップがなかったら、先頭にいるボート(クリアアヘッドの艇)が最初に回航する権利を有する。権利は1艇が2艇身ゾーンに入った時に決まることを忘れずないこと。その後でオーバーラップがなくなっても権利は継続される。同様に、ボートが2艇身ゾーンに入った後で作られたオーバーラップは関係ない。
 クリアアヘッド、クリアスターン、そしてオーバーラップのボートを区別するのに使われるラインはボートの最後尾ポイント(すなわちラダ−の後)から真横に引いた線だ。そのためボートの角度が変わるとこのラインも移動する(図8-24)。


図8-24 オーバーラップのステータスはボートの角度によって変わる。黒とグレーのボートは同じポイントにいて角度が違うだけだが、黒の角度では白いボートはオーバーラップしておらず、一方グレーの角度では白いボートはオーバーラップしている。

 マークでの出来事から起こる論争は、オーバーラップがあったか否かによることが多い。こうした論争は、だれが回航するためのルームを持っており、だれがもっていないか(特にマークの周囲で2艇以上が集まっているような時)をセイラーが口頭で確認することで避けることができる。集まっているうちの1艇が2艇身ゾーンに入る直前に、周囲のボートに対し彼らにルームがあるかどうかを知らしめる。インサイドにいて、明らかにルームがないボートに対しては、大きな声ではっきりと「2艇身、オーバーラップなし!」と叫ぶ。君に対してルームを与えなければらなない外側のボートに対しては「2艇身、水(をくれ)!」と呼びかける。君に対してルームのあるボートに対しては前に行くように手をふる。

他艇がいる場合の回航
 2艇身ゾーンに入る直前にオーバーラップを得ることが大変重要だ。上らせる、あるいはベアすることで前のボートをブランケットしたり、あるいはオーバーラップできるように波に乗せる。インサイド・オーバーラップを取っていたら、マークをパスしジャイブ(必要があれば)するために十分なルームは約束されている。合理的な距離を確保しながらマークに入り、マークの近くを出ることによって、後続艇がマークと君の間に割って入ることを防ぐ。ジャイブする際に、外側のボートが近づきすぎていたらジャイブすることを警告する。
 君が他艇にルームを与えなければならない場合、大きく外側を回る(マークから大きく距離をとって入る)ことによって、マークを出る時に、相手のトランサムに自分のバウを向けることができる。相手の風上、風下に自分のバウをオーバーラップさせないようにスピードを落とす(上らせてセイルを風に立てる)。クリアスターンの位置にいれば、相手がマーク回航を失敗した場合、相手とマークの間に割り込むことができる(図8-25)。風上へ割って入るようにできなくとも、マーク回航の後タックする自由を得ることができる。


図8-25 下マーク回航 左:黒いボートは大きく外側に出て、白いボートのスターンの位置を維持する。黒いボートは白いボートのスターンに向けて上らせることによって、白いボートの回航失敗を有利に利用できる。右:黒いボートは外側に出なかったために、白いボートの風下側へトラップされたままでマーク回航を終える

 同様に、この方法は多数のボートの外側になってしまった場合に適用できる。すなわち、一団の風下へ回航するよりも、ボートを止めて一団をやり過ごしてからマークの近くを回航すること。ただし、スピードを落とす前に、後ならびに外側のボートに対しては、自分が「水」をもっており、彼らは自分の後にマーク回航しなければならないことを明らかにしておく(彼らが君の風下へ行くのではない限り)。集団の中にいるボートは、互いにトラップされやすいので君が彼らの風上へと抜けるチャンスもある。
 ジャイビング・マークでは、前のボートの風上に向かって割って入ることができるようしておくことが次のリーチで高くセイリングするというオプションを可能にし、これにより次のマークでクリアエアとインサイド・オーバーラップを得ることができる。下マークでも、風上へと入り込むことがより優位となる。つまり、マーク回航後すぐにクリアエアの中でタックする自由を得、これにより風下側前方のボートとなった者をコントロールすることができる。逆から言えば、バウを前方、あるいは風下方向にいるボートにトラップされてしまうのは大きな損失となる。タックする自由もなくなり、長い間乱れた空気の中でいることになる。

風下ゲート
 下マークでの混雑を和らげるために、下マークにゲートが使われることも多い(図8-26)。ゲートの場合には、下マークへアプローチする間に、次の上りレグの戦略を考えておかなければならない。2つのマークのどちらかを選ばなければならない。考慮すべき要素としては以下の通り:
* どちらのマークがより風上にあるか? ゲートの間隔はスターティングラインよりもかなり短いので、差は大きくない。しかし、競争の激しいフリートでは、インチの差も影響する。鋭く観察することで好ましいエンドを測定する。
* より近いマークはどちらか? 明らかなことだが、他の全ての条件が同じなら一番近いマークを回航するのが最も都合がよい。
* 風上レグでどちらのサイドが好ましいのか? まだランニング・レグを走っているフリートがいる場合には、一方のマークを回航してからコースの反対側へ横断するのは難しい。
* どちらのマークが混雑していないか?
* この瞬間の風はどちらに振れているか? レーザーのランニングはジグザグ走行なので、これを測定するのは容易でない。コンパスを使っても判断するのは難しい(マークを回航してしまうまでは)。


図8-26 風下ゲート。黒いボートはより風上の有利なエンドを回航する