上マーク


最初の上マークは混雑しやすいので、アプローチのプランを立てておくことが必須だ。この時点でのたった1つの失敗は、取り返すことができない絶対的な脱落の意味にもなりうる。
 
上マークへのアプローチ

コースの左右いずれ
か、あるいは中央から上マークにアプローチすることができる。どの方法を取るかは以下の事項による:
上りレグでの戦略
 たとえばコースの左側が望ましい場合、左側からポートタックでのアプローチをすることになるだろう。
* 風のシフト
 左右に振れるシフトの中をセイリングしている場合、どちらの側からアプローチするかは、自分がマークにアプローチする時にどちらサイドからシフトが来るかによる。
* 混雑予想
 大きく、競争の激しいフリートで上りレグが短い場合、自分がフリートの最初か最後でなければ、上マークでの激しい混雑を予想しておくこと。混雑した状況ではスターボード・タックでいることが有利であり、マーク周辺ではスターボード・タックの一群が行列を作る(図8-18)。


図8-18 スターボード・タックの行列

レイライン

レイラインを避けること
 可能な限り最短の時間で上マークにたどりつくには、可能な限り最後の瞬間までシフトを利用しなければならない。フリートレースの場合、早くレイラインに到達してしまうとそれ以降のシフトを利用することができなくなるので、避けるべきだ。レイラインにいる時リフトを受けたら、そのボートはオーバーセイルしてしまうだろうし、もしヘッダーを受けたら風下側の全艇に先行されてしまう。

レイラインの戦術的利用
 2艇間の上りレグ競争は、ボートがレイラインの一方に到達した時に終わる。つまり、先行艇はレイラインを自分のリードを守るために使うことができる。後続艇がレイラインから離れている時には、裏風やブランケット・ゾーンを利用し、相手がレイラインに向けてタックするよう仕向ける。相手がレイラインに向かってセイリングしていれば、そのまま走りたくなるようなクリア・エアを与えよう。ひとたび後続艇がレイラインに着いたら、それで少なくとも上マークまではゲームはおしまいだ。相手は君に追いつくために風のシフトを利用することができないだけでなく、マークまで君の背後の乱れた風の中を走ることを余儀なくされる。
 君がカバーされる側だったら、レイラインを避けること。たとえば、レイラインに向かってセイリングしている間、わずかなヘッダーであってもタックしてレイラインから離れる。同時にカバーをはずすことを試みよう。

レイラインの判断
 自分がレイラインに乗っているかどうか判断することは簡単ではない。これはマークから遠く、また潮流がある場合には特に難しい。もし、自信がなければタックすることだ。早めにタックするとマークに近づくためにさらに2回タックしなければならなくなるが、レーザーではタックによるロスは非常に小さい。タックによるロスよりも、マークを行き過ぎてしまうことの方が大きな距離のロスとなる。

スターボード・タックのパレード

 最初の上りレグの終わる頃、通常、フリートはまだばらばらになることはなく、マークではスターボード艇の行列が形成されることになる。この列へのアプローチには2つの方法がある:

行列の最後尾に続く
 保守的なアプローチは、早めにスターボードのレイラインに行き、列の後ろに続くことである(図8-19の黒いボート)。このアプローチは最も安全であるが最速の方法ではない。ヘッダーを利用することができない上、ライン上に並ぶボートは互いの空気の流れを乱し、風下へスリップするだろう。新たにライン上に入ってくるボートは、他艇よりも少し風上にタックしてくるために、ボートのライン全体はレイラインよりも高い場所に位置することになる。レイラインぎりぎりでタックすると、乱れた空気によりマークを回航することができなくなるだろう(図8-19のW1艇)。マーク回航できなかったボートはジャイブして一回転し、あまり遠くまで行かないでラインの隙間に入り込むめるように願いつつ、行列の後方へと向かうことになる(図8-19のW2艇)。大きなフリートでは、2回目あるいは3回目試みて、行列がまばらになったころ、ようやくマーク回航できるといったことも珍しくない。

ポートタックアプローチ
 これは、マークでスターボード艇の行列に隙間ができることを願いつつポートタックでマークに近づき、行列をカットしてマーク間際でタックし回航する(図8-19の灰色のボート)。予想、タイミング、行列の隙間に対する鋭い観察が、ポートタック・アプローチを成功させるためのカギである。もし失敗したら、レースに負けるだけでなく、ペナルティターンを受けたり、クレーム・ヒアリングに出席する可能性が高くなる。
 また、ルールはポートタック艇に有利には働かない。まず第一に、マーク回航するためのルームは、反対タック艇の間では、両者が上りにいる時、あるいは一方がマークをパスするためのプロパーコースがタックをすることである場合には適用されない。第二に、2艇身ゾーンの中では、ポート艇がぎりぎりでタックしたとしても、クローズ・ホールドよりも上ってセイリングしなければならないとすれば、ポート艇が間違っていることになる。スターボード艇が接触を避けるためにベアし、その結果風下艇とオーバーラップが成立した場合、ポートタック艇はこれをじゃましてはならない。第三に、アプローチしなおすためにジャイブしてターンするより360度のペナルティターンの方がロスが小さいと知りながら意図的にマークにぶつかったボートは、その意思決定に多大なコストを払うことになるだろう。なぜなら「マークに触ってターンすることで、レース中に多大なゲインを得たボートは、レースから退場することになる」というルールがあるからである。



図8-19 スターボード・タックのレイライン上(まっすぐな破線)での行列。黒いボートはこの行列の最後尾から加わるという保守的な方法を採っている。灰色のボートはフリートの集団が到着する前に、ポートタックアプローチを成功させている。白いボートW1はレイラインより少し上でタックをしたが、風上側のボートで乱れた空気によってレイラインの下に落ちてしまった。白いボートW2はマーク回航できず、もう一度やり直すためにジャイブを強いられた

マーク近くでの反対タック艇との交差
 
 上マークではコースの両側からのボートが集中するので、多くのポート対スターボードの接触がある。素早い判断といくつか先の動きを考えておくことがマークで順位を上げるのに役立つ。ここでの目的は、権利を守り、マークでタックする自由を維持しておくことである。2艇のボートがマークの近辺あるいはスターボードタックのレイラインで遭遇した場合に、いくつかのシナリオが可能となる:

自艇がポートタックで、衝突コース上にスターボード艇がいる場合

 相手の手前でタックするか、あるいは相手のトランサムを横切って風上後方にタックするかは、相手がマークをクリアできるかどうかによる。スターボード艇が確実にレイラインよりも上にいたら、オーバーセイルを避けるために相手の下でタックする。仮に相手がマークをクリアできなければ、トランサムを横切りレイラインに乗ってからタックする。
 スターボード艇がマークをクリアできるかどうか判断をするための、正確ではないが可能な方法として、相手のブームエンドがトランサムの角のどこにあるかを見る方法がある。もし、ブロック・トゥ・ブロックまで引いていれば、相手はレイライン上かそれよりも下にいて、ブームをアウトボードに出していればレイラインよりも上にいる。

自艇がスターボードで、ポート艇と衝突コースにいる時

 
 自分がマークを回航できれば、ポート艇に向かって叫び、相手が自分の「ルーム」の中でタックしないよう警告する。これに応じて、相手は君のトランサムの後ろに少し下がるか、あるいは君のルームの中でタックするのを避けるために早めにタックするだろう。いずれにしても君はマークに向かってクリアエアを得ることができるだろう。あるいは相手が君の警告を無視し、リーバウ・タックしてくるかもしれない。これを避けるには、そのまま自由にセイリングし(マーク回航できるとすれば)自分のコースを保つ(権利艇は針路を保たなければならない)。相手がリーバウでタックしてきた時、裏風を避けるため上らせる(図8-20左)。
 もしマークをねらえなかったら、ポート艇に出会う前にタックする。あるいは、自分はたやすくマークを回航できると見せかけて、ポート艇に自分よりも下でタックをさせ、マーク回航のためにさらに2回のタックしなければならないようにさせることもできる。こうするには相手が自分を見ている時にブームを緩める。もし、ポート艇がこの策略にはまり、リーバウでタックしてきたらポートにタックし、その後スターボードにタックする。そうすれば次に出会う時にもまたスターボードタックの優先権を持つことができる(図8-20中央)。
 しかし、もしポート艇が君がマーク回航できないことをわかっていたら、相手は落として君の後ろを横切る(ダックする)だろう。次に出会う時に相手にスターボードタックの権利を与えないようにするには相手が君のトランサムを横切ったらすぐにタックし、レイラインに乗るまでポートタックで相手を押さえる(図8-20右)。
 



図8-20 上マークでの反対タック。左:黒いボートは上マークより少し上にいるが、レイラインに乗るために少し落とすと白いボートはリーバウにタックすることもマーク周回もできなくなり、黒いボートのトランサムへダックすることになる。中央:黒いボートは白いボートをリーバウ・タックするように誘い込んでから、タックして離れ、次に出会う時にスターボードの権利を保つため再度タックする。右:白いボートは右に行き、黒いボートのトランサムへダックするという賢明な選択をしたが、黒いボートは白いボートのぎりぎり近くにタックし、白いボートがマークに向けてタックする自由を奪う。マークに向けてタックするには、白いボートはスピードを落とすか、2艇間にスペースをつくるためにスピードを落としてそのままセイリングするしかない。

自艇がスターボードで、ポート艇より十分前にいる時
 ポート艇が君のトランサムを横切る時、相手は当然君のボートのセンターラインを見て、君がマークをねらえるかどうか見極める(図8-21)。もしポート艇と君がそのシリーズでの順位を競っている場合には、実際にはレイラインよりも下にいるように相手に思わせたくなるかも知れない。そうすれば相手はオーバーセイルするだろう。ポート艇をだますには、相手が君をうかがっている間少しベア(セイルを緩めずに)してバウをマークよりも下に向ける。反対に君がマークに届かないがポート艇に対して届くと思わせ早めにタックさせたければ、相手が君をうかがっている間、バウをマークよりも上に向ける。ただし、こうしたトリックは経験豊富なセイラーには効き目がないので、優れたフリートでは自分自身のベストコースをセイリングする方がよい。



図8-21 白いボートは、黒いボートのトランサムを横切る間に、黒いボートのセンターラインから彼がレイラインに乗っているかを見極める