5 マーク回航

content by Ben Tan
reviewed by Alexandra Nikolaev and Lock Hong Kit




 レーザークラスの大きなフリートレースでは、マークでのわずか数秒の間に順位が変動するということも多い。一方、マークとマークの間で順位を一瞬にして入れ替えようというのはかなりたいへんだ。マーク回航でボートを追い越すには、単に優れたボートハンドリングだけでなく、瞬時に活かせる競技ルールの知識と戦略的なトリックの蓄積が必要だ。本章では、ボート・ハンドリングの要素を見ていくことにし、戦術的な側面は8章で取り上げる。
 マーク回航はボートをターンさせるというだけのことではなく、すべきことがたくさんある。各マークでの基本を練習し、身につけておけば、風に対する戦略などのその他の要素に気を配る余裕ができる。

 一般的に使用されるコースを図5-1に示した。


図5-1 一般的なコース。左)外回りトラペゾイド(台形)コース/中)内回りトラペゾイド・コース/右)トライアングル・コース
 上マーク

 最初の上マークは、一番混雑するが同時に最も興味深い場面である。図5-2に示した一連の操作は、スターボードタックでのアプローチのものである。

1. 次のマークはどこにあるか? 上マークの混雑に入る前に、次のマーク(ジャイビングマークか下マーク)を探しておくこと(図5-2a)。次のマークのある場所への方向を認識すること(オリエンテーション)により、上マーク回航直後に次のマークに真直ぐ向かうことができ、コースから外れないですむ。たとえ先頭集団にいなくとも正しい進路にいることが重要だ。前のボートが正しい方向に向かってないような時(前のボートがメインシートを緩めたまま上っている時など)、前のボートについていってしまいやすい。

2. メインシートをほぐしておく メインシートに結び目ができていないことを確認しておく。これは、タックの時にメインシートの周りをキックする癖がある人や、上りレグで何度もタックをした時には特に重要だ。

3. アウトホールを緩める 上マークの約10m手前でコントロールラインを緩め始めること(この距離は、上達すれば短くすることができる)。次のレグのためにアウトホールを緩める必要があれば、できる限り体を外側に出したままで少しラフし(ボートがヒールしないように)、メインシートをティラー・エクステンションを持っている手で持ち、アウトホールをリリースする(図5-2b)。ブームにマーキングしてあれば、即時に正しいセッティングを得ることができる(1章参照)。アウトホールをリリースする必要のない場合があることに注意。上りレグでセイルのフットがすでに最大限になるようにセットされている時はもちろんだが、かなり風が強い時には上りレグの間はアウトホールをきつくしておくべきだし、下りでもそのままにしておくことがベストである。

4. バングを緩める アウトホールを緩めた後直ちにバングのクリートを外し、メインシートを緩め、そしてバングを適切なセッティング(バングの末端につけたマークを使って)にクリートする(図5-2c)。




図5-2 上マーク周回

5. カニンガムを緩める 以上のことと同じようにスムーズに、必ずしなければならないことは、カニンガムのクリートを外すことである(図5-2d)。もし、うまく緩まなければ、前に移動し、カニンガムのマストと平行になっているところを引いて緩める。
 コントロールラインの解除が終わった段階でまだ上マークに到達していなければ、ハイクアウトしてスピードをつける。

6. ベアしてプレーニングに入る 上マークでは、センターボードを上げ、そしてベアする(図5-2e、f)。できるだけ速く波を捉まえることに集中しよう。タイミングよくセンターボードを上げることができなければ、まずプレーニングし、その後センターボードを上げる。
 特に次がランニングの場合には、シャープにベアする能力が重要だ。下りレグで左側をセイリングしようとするならば、ボートの軸を回し、すぐ後ろのボートのブランケット・ゾーンから抜け出す。こうすることで左側から追ってくる後ろのボートの意欲をくじくことができる。
 シャープにターンするためには、ボートをフラットにし、素早くメインシートを緩め(必要であればメインシートブロックを通してメインシートを送り出す)、そしてセンターボードは少し上げておくべき(特に強風の場合)だ。素早く体重をボートのセンターラインに戻し、アンヒール沈を回避する。

7. ハイキングストラップをきつくし、バングとカニンガムの最終調整を行う ボートがジャイビングマークに向けて新しいコースに乗ってプレーニングした後(コンディションが許せば)はじめて、リーチングに向けて必要に応じてハイキングストラップをきつくする。

 軽風の場合、上マークに近づきながらバングを適切に緩めることは難しいので、上マークを回った後でさらに緩める必要があるかもしれない。同時に、カニンガムのテンションを完全に抜く。
 上マーク周回で最も大切なことは、できるだけスピードを失わないようにセイルセッティングを変え、上マークを回航した後すぐにプレーニングさせることだ。上マーク回航の後でアウトホールとバングをリリースすることは難しいので、回航前に緩めておく必要がある。カニンガムが緩められない、あるいはセンターボードをタイミングよく上げれない場合は、回航後に行うこともできる。
 もし、ちょうどレイラインにいて、二回タックするとレイラインよりもかなり上に行ってしまう場合、マークを“シュートする”という選択肢がある。これは、バウがほとんど風位に立つほど上に向けることで、今あるボートの推進力をマークを過ぎるまで有効活用するものだ。軽量のレーザーでは得られる推進力は限られているから、上る前にフルスピードでセイリングしていることが重要である。加えて、潮流が逆の場合にはマークをシュートすることは考え直した方がよい。