2 セイルチューニング
content by Ben Tan and Jacqueline Ellis
reviewed by Rod Dawson
セイルシェイプのコントロール
話を簡単にするために、セイルを上部・中央・下部に三等分して考える。3つのコントロールライン(とメインシート)のそれぞれは、このセイルの3分の1の部分をパワーアップさせたりパワーダウンさせている。
ジャッキーのラジアル・セイラーのための秘訣
セイル・チューニングこそ、ラジアルとスタンダード・リグの間のもっとも顕著な違いだ。これは明らかにセイルのカットが違うことによるものだ。ラジアル・セイルはその名の通り、クリューから広がるように放射状にカットされたパネルのつながったものだ。適切にセットするのはフルリグよりやさしい。ラジアル・セイルのフットはフルリグのセイルと同じ水平面での長さを持つが、セイルはより深くなっている。縦は60cm短く、セイルエリアは1.3平方m(または18はパーセント)小さい。マストのボトムセクションは小さなセイルに合わせて60cm短くなっている。より薄い規格とスリーブによって、ボトムセクションはセイルシェイプに合うようにベンドしやすい。
セイルセッティングは体重とフィットネス・レベルによって異なる。風が強まった時、あなたが競走相手より軽かったり、体力が劣っていれば、すぐにパワーダウンする必要が出てくる。大切なのは、セイルセッティングは自分の必要に合わせるべきで、隣のセイラーに合わせるものではないということだ。
カニンガムとバングのセッティングはフルリグとほとんど変わらない。ラジアルの違う所はメインシートとアウトホールのセッティングにある。(編注:2001年から新しいタイプのラジアル・セイルがリリースされ、従来のセイルよりトリムしやすくなっているという。)
カニンガム
ハンカチの端と端を折り返して、両端を引っ張って持つ(図2.7)。そして両端を横に引っ張り、しわがどうなるか、そしてハンカチの真中が折り目に向かってどのように引っ張られるかを見てみよう。これと同様に、カニンガムが引っ張られると、セイル生地はラフに向かって引っ張られ、ドラフトを前に持ってくる(図2.8上段)。これによりアタック角度(風に対するセイルの角度)が大きくなり(つまりエントリーがより丸くなる)セイルはストールしにくくなり、ポインティング・アングル(上り角度)はより低くなる。
図2-7 布のバイアス〈織り目と交差する方向〉の角度に加重すると、折り目は加重の方向になり、布は折り目の方に引き寄せられる(ハンカチの上のマークは上に移動する)
レーザーでは、セイルのツイスト(ねじれ)に対しカニンガムが果たす役割が大きい。カニンガムを強く引くと、セイルのツイスト(ねじれ)が増し、リーチが開く(図2.8下段)。このことでセイルの上3分の1部分から空気がもれ出し、効率的にリグのパワーダウンができるのだ。
図2-8 上段)ドラフト位置に対するカニンガムの効果。カニンガムが引かれるとドラフト位置(矢印)は前に移動する(右)
下段)セイルのツイストに対するカニンガムの効果。カニンガムが引かれるとリーチが開き(右)、風はセイルの上3分の1から逃げる点線矢印)。
・アップウインド
ハイクアウトが必要ないような軽風の場合、セイルはパワーアップが必要なのでカニンガムのテンションはほとんど必要ない。よい目安のひとつとして、大きなしわを取り除き“スピードクリース”と呼ばれる小さなしわを残す程度にカニンガムを引けばよい。
ハイクアウトしてもボートがフラットにならない場合は、セイルをパワーダウンさせることになる。セイルの上3分の1は傾斜力(ヒーリング・モーメント)が最も高いので、まず最初にその部分から力を逃がす必要がある。グロメット(セイルのタックの穴)がグースネック(またはセイルが古くて伸びている場合、グースネックの下)に達するまでカニンガムを強く引く。
・オフウインド
クローズ・ホールド以外でのセイリングでは、カニンガムはいつも完全に緩めていなければならない。例外はオーバーパワー状態でのリーチングである。
ブームバングとメインシートのテンション
マストベンド(屈曲)とリーチのテンションは、バングとメインシートのテンションによって決まる。アップウインドではバングとメインシートがリーチのテンションとマストベンドをコントロールするが、オフウインドの場合はバングだけでコントロールすることになる。バングあるいはメインシートにテンションがかかるとマスト、特にその中央部分が曲がる。このことによりセイルの中央がフラットになる(つまりキャンバー《彎曲》が下がる)。風力が強まるにしたがって、一般的にはセイルの上部3分の1を最初にパワーダウンさせ、その次に中央の3分の1部分をパワーダウンさせていくことになる。
・アップウインド
中風の時には、メインシートのテンションをきつくし、リーチが真直ぐになるようにする。バングのテンションは必要なく、タックしやすようにわずかにたるみを取る程度でよい。最適なメインシートのテンションは、どの程度マストを曲げるか、すなわち中央3分の1からのパワーがどの位欲しいかによる。おおまかに言うと、ボートのサイドデッキに座っている時(ハイキングが必要ない時)には、ブームエンドブロックとメインシートブロック(トラベラーブロック)との距離が30センチからブロック・トゥ・ブロックの間に収まるようになればいいが、これは風力(強ければブロックの間を近くする)・波(大きければブロックの間を離す)・上り角度(より上りたければブロックの間をより近くする)によって変える。お尻がボートの縁を越える時は、セイルトリムはブロック・トゥ・ブロックの位置になっていなければならない。
一度ブロック同士がくっつくと、あとはバングを引くだけでさらなるマストベンドが可能となる。オーバーパワーの状況では、バングをきつくし、メインシートが緩んだ時ブームが上に跳ね上がるのではなく外に出るようにする。
・リーチング
リーチやランの時、マストベンドをコントロールするのにメインシートでは効率が悪いので、バングテンションが唯一の手段となる。リーチングに入る前、クローズ・ホールドで上マークへのアプローチの間にバングのテンションをセットするのが一番よい。中風の時はブロックの間が30センチ離れるまでメインシートを緩め、それからバングを緩めてたるみがないようにクリートする。上マークを回航しリーチングに入ったらブームは水平より少し高く、そしてマストは相対的に垂直にする(図2.9)。
非常に軽風(漂うような)の時は空気の剥離防止のためにフラットなセイルが望ましいので、バングのテンションは強くなければならない。このような場合、バングのテンションはブロック・トゥ・ブロックの位置から30センチではなくおおよそ20センチ程度がよい。
これに対して、強風で波が大きい場合は、バングのテンションはブロック・トゥ・ブロックの位置から30センチ以上離した方がよい。これによりブームが波より上がるとともにリーチが開くのでセイルがパワーダウンする。
図2-9 中風でのリーチング
・ダウンウインド(下り)
ダウンウインドの時、バングは緩めていなければならない。マストを真直ぐまたはほとんど真直ぐにし、ブームを水平よりも上に位置させリーチを開かなければならない(図2.10)。
強風の時にセイルをツイストさせ過ぎるとセイルの上部ではコードがハルの中央から90度を超えてしまう。そうすると揚力がボートをアンヒール(風上にヒール)させるベクトルを持ち、デスロール(アンヒール沈)が起こりやすくなる。このような場合、ボートを安定させるためにはバングのテンションを強め、ブームが船体の中央から75度位になるようにセイルを引き込む。
図2-10 軽風でのダウンウインド
ジャッキーのラジアル・セイラーのための秘訣
1988年イギリスでのウィメンズ・ワールドの直前に初めてラジアルでセイリングしたとき、私はまずラジアル・セイルの違いを感じた。当時オーストラリアにラジアルはなかったのだ。フルリグではほとんど常にメインシートはブロック・トゥ・ブロックまで引くから、私はラジアルに乗るとすぐに同じようにした。ボートはアンダーパワーでストールしたようで、ひどいものに思われた。コントロールラインを操作して、なんとか解決しようと試みたがうまくいかず、ボートがパワーアップしていい感じになったのはメインシートをブロック・トゥ・ブロックから20cmほどゆるめた時だった。選手権の間中、こうしてメインシートをゆるめることによって明らかにスピードが違うことがわかった。
風の強さによってブロックの間の長さは違ってくるが、どんなに風が弱くても30cm以上ゆるめてはならない。風が強まるにつれて徐々にブロックの間隔を詰めていって、強風になった時にはちょうどブロック・トゥ・ブロックになるようにする。そして、そこでもしオーバーパワーだったら、今度はシートをゆるめていき(バングとカニンガムを調節した後で)、ボートをフラットにするために風を逃がしてやる。メインシート・トリムはさまざまに試してみて、体重やその時セイリングするコンディションによって自分に合ったセッティングを見つけていかなければならないものだ。直線スピードの練習をする時に、パートナーと走ってみるのが非常に効果的だ。
アウトホール
アウトホールの作用は最も理解しやすい。つまりコード(ラフとリーチの距離)を長くするのだ。これによってセイルの下3分の1部分のキャンバーをフラットにしたり減少させる。セイルの下3分の1は、最小のヒーリング・モーメントで多くの推進力を生じさせるので、風が上がってきた時も一番最後にパワーダウンさせるべきだ。
アウトホールは、一番ゆるい時でもセイルの一番深い所からブームまでの距離(つまりフットの深さ)を15センチ、つまりてのひらを軽く広げた時の小指の端から親指の端までの大きさでなくてはならない。これはクリュー(セイル後端)の端からブームエンドまでの距離ではおよそ16センチに相当する(正確な長さはセイルがどの程度伸びているかによる)。それよりも深いと空気流の剥離が過度になってしまう。間違ってもフットの深さが15センチを超えないように、アウトホールをリリースした時、一番深くても15センチ内でノットを作るべきである。この最も深いフットは波がある時、風の強さの変動が大きい時に適している。
・アップウインド
非常に弱い風の時はセイルのブレイク・ポイントが前に移動してしまいやすいので、深さを10センチ程度にすると速くなる。強風の時にもフットはおおよそ10センチ程度の深さにしてセイルをフラットにし、推進力には最小の妥協をしながら波に立ち向かう。完全にハイクアウトし、カニンガムをいっぱい引き、バングのテンションをかけてもボートがフラットにならない時には、セイルのフットをさらにフラットに、また必要ならば完全にフラットにしてもよい。
・オフウインド
リーチングや下りの時、フットの深さは風の強さに関わらず10センチから15センチ位にすべきである。ただし、オーバーパワーの時には考える必要はない。これに対する例外は強風時のタイトリーチの時で、まだヒーリング・モーメントはかなり強い。このような場合、アップウインドと同じセッティングでよい。
トラベラー
トラベラーはどんな状態でもきつくしておくべきである。トラベラーが緩むとブームはセンターライン方向に引き込まれてしまう。しかし、レーザーにはブレイク・ポイントをリーチの方向に動かすジブがないので、この状態は好ましくない。ブームがトランサムの端からより内側に来てしまう時には、足を使って隅に押し戻さなくてはならない。
軽風時のタックあるいはジャイブの際にブロックがティラー上を動きやすくするためトラベラーを少し緩めることがある。しかし、フラットなカーボンファイバーティラーの場合にはこれは必要ない。
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