11.セイラーのための栄養学
文=Gary Slater![]()
体重の減少と増加
ほとんどのスポーツ選手は、競技生活のある段階で体重を調整することが必要となる。ケガやオフシーズンの休養によって体重が減少することもあるし、体重を増やし体格、体力、パワーを増加させる必要があることもある。レーザーセイラーも例外ではない。宣伝パンフレットなどで体重の増減について書かれているものもあるが、基本的な原則は簡単だ。体重の増減は、毎日の活動を通じて消費されるエネルギーと摂取された食物からのエネルギー摂取とのバランスの結果だ。摂取が消費より少ない時には、体重は減少し、逆にエネルギー摂取が消費を超えると体重は増加する。
体重減少と体脂肪
体重減少プランのポイントは体脂肪の減少にある。このためには、適切にデザインされた体力トレーニングプログラムが必要だ。そして、摂取する食物の絶対量を減らすよりも食物の質に焦点を当てたバランスのよい食事プランを必要とする。栄養価の高い炭水化物豊かな食物は、まだダイエットの基本となり、そうすることで適切な燃料としてトレーニングやレースで使うことができるのだ。必要タンパク質は体重減少中は同量のままにする。したがって、エネルギー摂取の減少は、食事の脂肪とアルコール摂取の減少で行うべきだ。脂肪はダイエットのエネルギーの中で最も凝縮されたもなので、わずかな脂肪摂取の減少でも、摂取された食物の総計に影響することなく全体のエネルギー摂取のかなりの減少となる。また、脂肪は飽満度合が低いため、食事の満足感が持続しにくい。食事中でどのように脂肪摂取を減らすかという秘訣はこの章の脂肪のセクションを参照してほしい。食事中の脂肪摂取をコントロールするほかに、次のような方法が、体脂肪レベルを減らすのに役立つ。
・新鮮な果実と野菜をたくさん摂取すること。いずれもビタミンと繊維が豊富で、ほとんどカロリーを含まない。1日あたり野菜をカップ2杯以上、果物なら2個以上とること。
・アルコール消費を限定すること。アルコール性の飲み物はエネルギーに恵まれているが、必須栄養素をほとんど含まない。乾きを押さえるのに果汁、強壮剤、清涼飲料、スムージー(乳飲料)、ミルク、およびスポーツ・ドリンクのようなエネルギー豊かな飲み物をとらないこと。これらは無脂肪ではあるが、過剰摂取しやすく、カロリーの取りすぎになってしまう。長いトレーニングセッションの間には、スポーツ・ドリンクが必要になるかもしれないが、その他の時には水を飲むこと。
・上手に計画すること。適切な選択がしやすいように、毎日の食物摂取を計画しておくこと。仕事机には果実入りのボウルを、また、手近に低脂肪のフルーツヨーグルトを置くなどして、いつも、適当な食物オプションが利用できるようにしておこう。
・進捗状況を監視すること。皮膚層カリパスで体脂肪レベルを測定し、体系的に評価できる人体計測の資格のある人のサポートを求める。測定は痛いものではなく、実施された計画がうまくいっているならば、どこまで進んでいるのか判断するのに役立つ。現在、多くの運動生理学者およびスポーツ栄養学者は、こうした資格を持っている。
・1日を通して食物摂取を等しく配分すること。1日あたり3回の主要な食事と2-3回の軽食をとること。これは、「エネルギーレベル」を維持し、かつ空腹感を覚えないようにするためだ。
・エネルギー摂取が毎日の基礎のエネルギー消費より少なければカロリーを計算する必要はない。適正なタンパク質を含み脂肪が低く、栄養価の高い炭水化物食物豊富な食事をとることが大切だ。
・10章、175頁で述べた、推奨される食事計画を適当な運動プログラムと組み合わせて考えること。
1週あたり0.5?1.0kg以下の体重減少をめざす。この場合、体重減少分のほとんどは体脂肪だ。これより速いペースでの体重減少は体脂肪だけでなく筋肉の減少も伴うことになる。
体重増加と筋肉
体重の軽いセイラーは、強風下でボートをフラットにし競争力を保つために、体重を増やす必要がある。しかし、脂肪のかたまりではパフォーマンスは改善されない。したがって、目的は筋肉を増大させることであり、筋肉のかたまりはボートをフラットにするのに役立つだけでなく、力も増強する。筋力の増強のためには、よく考えられた筋力トレーニングプログラムとともに、エネルギー豊富でタンパク質を含んだ食事プランも必要となる。
エネルギー摂取を増大させることは難しい場合もある。頻繁かつ長時間のトレーニングセッションのために食事や軽食の時間が制限されたり、水上やジムでの集中トレーニングによって食欲が減退したりする。そうした場合はエネルギーLかな軽食と飲み物で解決することだ。
食事プランの中でエネルギー量を増大させるための秘けつは以下の通り。
・食事と軽食の頻度を増やす。一般に、既存の食事の量を増大させるよりも頻繁に食べる方が胃の負担は少ない。毎日3回の主要な食事をとり、忙しくても1日に2、3回は軽食をとること。
・エネルギー豊かな飲み物(たとえば、スムージー、ミルクセーキ、栄養補助食品の流動食、果汁、強壮剤、清涼飲料、スポーツ・ドリンク)および炭水化物豊かな食物(たとえば、ジャム、ハチミツ、シリアルバー、ドライフルーツ・穀物混合物)。タンパク質とエネルギーを補充するために、スキムミルクをホームメード・ミルクドリンクに加えるのもよい。
・高繊維質食品の摂取を調節する。選択肢の中のいくつかのホールグレイン(全粒穀物)を止める、または精白穀物と交換することを考える。低いエネルギーの果実、および野菜は大きな栄養源ではあるが、より多くのエネルギー豊かで栄養分豊かなオプションにかえる。
・何をいつ食べるか食事プランを立てる。つまり、必要な時に適当な食物と飲み物が手近にあるようにする。トレーニングバッグに腐らない軽食を入れておけば迅速に補給できる(たとえば、テトラパックのUHT(超高温瞬間殺菌)フレーヴァード・ミルク/果実ジュース、シリアル・バー、液状の食事サプリメントやスポーツ・ドリンク)。
より多い食物摂取をすることで、通常、タンパク質量も同時に増大する。したがって通常特別なタンパク質サプリメントは必要ではない(適正なタンパク質をとるための食事に関してはタンパク質摂取の項を参照。)
ただタンパク質摂取だけを増やすのではなく、全体のエネルギー摂取を増大させることを中心に行うべきだ。トレーニングサイクル(14章)の準備段階は、筋肉増強のための理想的な期間だ。筋肉増強段階は、筋力トレーニングプログラム(10章)とともに、筋肉の成長を促進します。全体のトレーニングボリュームを低く保持しながら、1週あたり最低3つの筋力トレーニングセッションを含むようにすること。体重がなかなか増えない場合、多くのカロリーを消費し、筋肉の増加を制限するようなコンディショニング・セッション(すなわち、有酸素トレーニング)を制限してもよいだろう。
短期および長期の体重増加目標が現実的かどうか確認しよう。週あたり0.25?0.5kgの体重の増加が適切な目標だが、実際の数値は遺伝的体質と筋力トレーニング履歴によって異なる。長期にわたって筋力トレーニングを続け、潜在的な能力の限界に近づけば、体重の増加は少なくなる。週あたり0.5kg以上の体重増加は、脂肪を含む可能性が高いので、あとで減量の必要が出てくる。
また、全体の体型の目標が現実的であることを確認しよう。多くのスポーツ選手は、筋肉を増大させて、同時に体脂肪を減らしたいと思っている。しかし、エネルギー摂取の縮小を必要とする一方で、エネルギー摂取の増加が必要となるという2つの目標は相反した関係だから、ほとんどのスポーツ選手は達成することができないのだ。優先事項を設定してそれに応じてダイエットおよび運動プログラムを実行することが必要となる。
進捗状況を評価するためには、体重減少の場合と同じように増強段階の間の体型のモニタリングが有効だ。エネルギー摂取が適正であるかがわかり、体重を気にする人も脂肪太りにならないようにできる。体重計、皮膚層カリパス、体型の測定により一般に体型変化が正確にわかります。体型変化をモニターするために、人体計測の資格のある人の補助を求めること。
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