10. セイリング・フィットネス
content by Michael Blackburn
reviewed by Todd Vladich, Pia Bay, Jacqueline Ellis, Saratha Bhai Krishnan, and Sharifah Shwikar Aljunied
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筋力と耐久力
女性セイラーのためのトレーニング
フィットネス・トレーニングは、特に競技としてレースを行なう女性にとって重要だ。そして、適切な指導を受けていれれば、筋力トレーニングは安全なものだ。
ラジアル・セイラーには、バングを引く時などに必要な瞬発力と同様に、ハイキング、常時行なわなければならないメインシート・トリムやステアリングなどのための筋持久力も必要になる。その双方に備えてトレーニングしなければ、セイリングの能力が影響を受けることは明からだ。 多くの女性は、大きく男性的な筋肉が発達することを恐れているが、これは必要ない。女性は、testosterone(男性ホルモンのひとつ)がないので、男性に比べて筋肉は肥大しにくいからだ。
男性と同じ筋力トレーニング・プログラムを利用してよいが、現在の筋力レベルによって負荷強度を調節しなければならない。負荷強度は通常男性より低くなる。
男性と女性では絶対的な筋力に相違があり、この差は下半身よりも上体で大きい。したがって、女性は上体のエクササイズにより多くの時間を費やす必要があるだろう。
Jacqueline Ellis
筋力トレーニングの変数
筋力トレーニングは次のような変数によって構成される:
・ エクササイズの選択
・トレーニングの負荷強度(レジスタンス=抵抗)
・トレーニングの量=反復回数/セット回数/頻度(1週のトレーニング日数)
・インター・セット・リカバリー(セットの間の休み)
筋力トレーニング・プログラムは、このトレーニングの変数の変え方によって、筋肉の育成(肥大)、最大筋力、持久力、瞬発力のそれぞれを目標にするよう計画できる。レーザーセーリングに最も関係がある、筋肥大と最大筋力に絞って見てみよう(表10-1):筋肥大トレーニングは、重いトレーニングによって補われる)は、同時に持久力と瞬発力を改善する。
表10-1 筋肥大と最大筋力のためのトレーニング処方
筋肥大
最大筋力
トレーニングの原則 中程度の負荷強度
多くのトレーニング量
短いインター・セット・リカバリー(セット間の休み)重い負荷強度
適度なトレーニング量
長いインター・セット・リカバリーエクササイズの選択
より多くの体重増加ができる、幅広い筋肉群のためのエクササイズ
セイリングに必要とされる筋肉のためのエクササイズ。特にハイキングとシーティングのための筋肉
負荷強度
最大反復強度8〜12RM
最大反復強度4〜8RM
セット
6〜8セット
3〜6セット
頻度
1週に3回以上
1週に3回以上
インター・セット・リカバリー
30〜45秒
1〜3分
最大反復強度(RM)は、指定回数ちょうどしか反復できない最大負荷強度を示す。たとえば、10RMは、最大限に努力しても10回だけしかできない負荷強度だ。力がついてきて、同じ負荷重量でより多くの反復をできることがわかったら、負荷強度を増して同じRMを保たなければならない。RMは異なる能力レベルに適応するので、男性と女性は同じRM処方を用いることができる。つまり、強いセイラーのための10RMは、より弱い者のための10RMより重い負荷になる。
目的が筋肥大であっても最大筋力強化であっても、最低限、1週につき3回のウェイト・トレーニング・セッションをしなければならない。
全身にわたるトレーニング・ルーティン(トレーニング種目の一連の流れ)の方が、スポーツのために効果が高く、時間の節約にもなるので、トレーニング・セッションでは、限られた一部分のトレーニング(分割ルーチン)よりも全身にわたるトレーニングを行なうこと。もっと後になって、(たとえば競技期間に)能力を維持するための筋力トレーニングは、1週に1〜2回で十分だ。
最大筋力向上のためのトレーニングではより重い負荷が科せられるので、最大筋力向上プログラムを開始する前に、6週以上かけて筋肥大プログラムで筋肉のコンディションを整えておくことが安全で、賢明だ。
筋力トレーニング・エクササイズの選択
筋肉は機能別に、シーティングのための筋肉/ハイキングのための筋肉/その他の筋肉の3種類に分類することができる(図10-4)。
・ハイキングのための筋肉:
大腿四頭筋(Quadriceps)
腰屈筋(Hip flexors)
腹筋(Abdominals)
足背屈筋(Ankle dorsiflexors)
・シーティングのための筋肉:
肩と上背部の筋肉(僧帽筋《trapezius》、三角筋《deltoid》、菱形筋《rhomboids》、広背筋《Iatissimus dorsi》)
上腕二頭筋(Biceps)
前腕屈筋群(つかむための筋肉)と前腕伸筋群
背中下部の筋肉(シーティングの際、胴体を安定させるための筋肉)
・その他の筋肉:
ハムストリングス、胸筋、ふくらはぎ(Calf=下腿三頭筋)、大殿筋(gluteus)、上腕三頭筋(triceps)、その他
「その他の筋肉」にあげた筋肉は、最初の2つのカテゴリーの筋肉ほど使われることはないが、バランスのよい筋肉組織を作り上げるために適度なトレーニングを行なうべきだ。
各筋肉のためにさまざまなエクササイズが考えられる(表10-2)。
エクササイズ選択の基本は、現段階での優先順位におくべきだ。たとえば、肩の能力は素晴らしいのに、大腿四頭筋は十分な強さがないとしたら、プログラムには、ふたつの大腿四頭筋エクササイズ(たとえばランジとウォールシット)に対し、ひとつの肩・背中上部のエクササイズ(たとえばベントオーバー・ローイング)を入れる。
体が絶えず異なる運動に適応させられるようにするために、エクササイズの種類は4〜6週ごとに切り替える。
表10-2では、エクササイズを筋肉群ごとに分類した。
大腿四頭筋のエクササイズ ウォールシット(図10-5)
背中を壁に付けて立ち、膝が90〜130度に曲がるまで下にずらす。短い休憩を入れて、全体で10〜30分の継続を目指す。膝痛の危険を減らすために、内側広筋(VMO)を意識
に収縮させるように努力する。
図10-5 ウォールシット。内側広筋(矢印)に力が入るようにすること
ニーエクステンション(マシン)
ジムでニーエクステンション・マシンを使う場合、一度に片足ずつ両脚を行なうか、両脚一緒に行なうこと。つま先を真っ直ぐ上方、またはわずかに外側に向ける。そして上に上げたらしばらく保持する。ハイキングのために特別な効果を上げるには、膝の伸張を長く保持する(10秒間)。
レッグプレス(マシン)
レッグプレスマシンを使う。足を臀部の幅に開き、つま先をわずかに外側に向ける。膝を90度に曲げ、そこから押し出す。常に膝をつま先の延長線上に保ち、背中下部をサポートにつけておくこと。
ウォーキング・ランジ(図10-6)
両手で体側ににダンベルを持つ。片足を前に踏み出し、背中と膝を床に近づけるようにする。立ち上がり、反対の足を踏み出して膝を曲げる。常に上体を直立させ、意識して内側広筋を活性化する。1セット10歩行なう(ウォーキング・ランジが難しければスタティック・ランジ《腰を落とした姿勢で静止する》でもよく、その後ウォーキング・ランジへと進んでいけばよい)。
図10-6 ランジ
ハーフスクワット
効果的な筋肥大エクササイズであり、また、重い負荷をかければ、幅広い筋肉群を刺激する最大の最大筋力エクササイズになる。ケガをしやすいので、慣れていない場合は経験あるインストラクターに相談すること。セイリングで必要な膝の機能は伸展側の30度なので、フル・スクワットを行なっても特に効果はない。
腹筋と腰屈筋
クランチ
マットに仰向けに寝て、膝を90度に曲げる。足裏を床につけ、手指は耳にかぶせるようにする。背中上部をできる限り高く持ち上げ(訳注:上体を起こすではなく、腹部を丸めるようにする)、しばらく保持し、ゆっくり下げる。腹筋の収縮を感じながら、勢いをつけずに繰り返す。20回を1セットとして3セット行ない、セット間に短い休みを入れる。2、3週間かけて6セット以上できるようにする。
〈バリエーション〉
・足裏を床から離し、膝と腰を90度に曲げて行なう。
・左肘を右膝につけるように、そしてその反対も行なう。足裏は床につけてもつけなくてもよい。
・脚を上に向け(膝はほぼ真っ直ぐ)、つま先に触るようにする。そして、ゆっくり肩を床に下ろす。
図10-7 基本のクランチ
シットアップ(腹筋)20回を1セットとして2セットから始め、2、3週間かけて6セット以上できるようにする。力がついてきたら、胸に軽いウェイトをつけて負荷を増やすか、回数を増やす。
リバース・シットアップ
膝を真っ直ぐにして、仰向けに寝る。脚が垂直になるまで上げ、はずみをつけずにゆっくり下ろす。かかとを床につけずに繰り返す。腹筋を引き締めて、常に背中の下部が床に着いているようにすること。そして、脚を下げるのは背中が上に反ってしまう前の段階までにする。腹筋が強くなれば、背中の下部を床から離さずに、足を床から1インチ以内まで下げることができるようになる。
ハイキング・ベンチ(図10-8)
セイリングする時間が取りにくい場合、ハイキング・ベンチは特に効果的だ。水平に体を伸ばす時間をだんだん長くしていくこと。
図10-8 ハイパーエクステンション・ベンチをハイキング・ベンチとして使う
上級のハイキング・エクササイズ
これらのエクササイズは、基本エクササイズを十分長い期間続けたあとで行なうこと。
・ハイキング・ツイスト
胸の前で手を組み、あるいはウェイトを持って、ハイキングする。肩を一方から反対側に回す。速度、ウェイトの重さ、反復の数を変えて行う。
・プライオメトリック(plyometric)・シットアップ
(訳注:プライオメトリック運動=筋肉の急激な動的負荷《伸展》に対する筋収縮のパワーを養成する運動)
トレーニング・パートナーが足首を下に押すこと以外は、リバース・シットアップに似ている(図10-9)。背中が常に床のマットについているようにすることを忘れてはならない。
図10-9 プライオメトリック・シットアップ
・ハイキング・スローダウン
ハイキング・ベンチを使いハイキングした姿勢から始める。胴体をハイキング位置から上げていったら、背後に立ったトレーニング・パートナーが肩を元の位置まで投げるように押し戻す。トレーニング・パートナーは、肩を押す高さ変化させる。
肩の筋肉
ショルダー・プレス
上体を伸ばして(ベンチに)座る。両手にダンベルを持って、(肩の高さで、肘を外側に開き)、手のひらを前に向ける。(肩をできるだけ動かさず、上体の反動を使わない。肘の角度は一定に保つ)肩の高さから、(肘を伸ばして、できるだけ肩を動かさないように)真っ直ぐに頭の上に持ち上げ、ゆっくり下げる。(カッコ内訳注)
スタンディング・ラテラルレイズ(サイドレイズ)
体側で両手にダンベルを持って立つ。(肘を軽く曲げ、弧を描くように)肩の高さまで持ち上げてしばらく保持し、ゆっくり下ろす。(肩をできるだけ動かさず、上体の反動を使わない。肘の角度を一定に保つ)(カッコ内訳注)
ベントオーバー・ラテラルレイズ
ベンチの端に座り、両手にダンベルを持ち、頭が膝の上にくるようにかがむ。両腕が水平になるまで、横に上げていき、しばらく保持し、ゆっくり下ろす。
アップライト・ロー(スタンディング・ロー)
(手のひらを内側にして《オーバーグリップ》)バーベルを持って立つ。手の間隔は肩幅より小さくする。肘を横に押し出すように曲げて、バーをあごまで持ち上げる。歯をぶつけないように。しばらく保持して、ゆっくり下ろす。
背中上部・化下部の筋肉
シーティッド・ケーブル・ロー(マシン)
ロー・プーリーを使用する。脚を伸ばして座る(ハムストリングがまだ柔軟でなければ膝をわずかに曲げる)。上体を真っ直ぐに保ち、ハンドルを両手でつかんで、胸の下部に向けて引く。途中から肩を後方にアーチ形に反らす。上腕二頭筋よりも背中上部を使うこと(肩甲骨を引き締めるようにして)。バリエーションとセイリングのためのエクササイズとしては、片腕で行なうこともできる。(訳注:マシンが利用できない場合、ゴムチューブで代用できる)
ワンアーム・ダンベル・ロー(図10−10)
上体が水平になるように、片方の膝と手をベンチに置く。反対の手に、手のひらが内側になるようにダンベルを持ち、床から肩の高さまで引き上げる。シーティッド・ケーブル・ロー同様、上腕二頭筋よりも背中上部を使うこと。
図10-10 ワンアーム・ダンベル・ロー
プルアップ(チンアップ/懸垂)
グリップの幅、握り手の内向き、外向きで変化をつけて行なう。各セットごとに、疲れきるまで可能な限り繰り返す。
短い休みの後、再度できるだけの回数を行ない、合計が15回になるまで続ける。じょじょに回数を増やし、1セッションでの合計が40回になるまで増やしていく。3回の挑戦(3セットで)合計40回できるようになったら、ウェイトベルトをつけて負荷を増やす。
上腕二頭筋
スタンディング・バーベル・バイセップス・カール
体の前で、手のひらが前を向くように(アンダーグリップ)バーベルを持つ。両手の間隔は肩幅。肘が後ろや横に動かないようにして、バーを胸に巻き上げる。
シーティッド・ダンベル・カール
ベンチのはじに背筋を伸ばして座る。手のひらが前に向くように、両手にダンベルを持ち、両手を交互に肩に向かって巻き上げる。
肘を脇腹に固定しトおくこと。
(注)前腕二頭筋は、アップライト・ロー、シーティッド・ケーブル・ロー、ワンアーム・ダンベル・ロープルアップなどの他のエクササイズである程度使われるので、特別なエクササイズは必ずしも必要ではない。しかし、強風時のシーティングで前腕二頭筋が疲れてしまうようであれば、特定のエクササイズをプログラムに加える必要があるかもしれない。
・前腕屈筋と伸筋
●リスト・フレクション
手のひらを上向きにしてバーベルを持ち、前腕をベンチで支え、手と手首はベンチの端から外に出す。手首を曲げてバーをできるだけ上に上げ、ゆっくり下ろす。前腕が常にベンチについているように注意すること。
●リスト・エクステンション
リスト・フレクションと同様だが、手のひらを下に向くようにバーベルを持ち、リスト・フレクションよりウェイト軽くしなければならない。
■背中の下部
●スーパーマン
スーパーマンが飛ぶ姿のように、マットの上にうつぶせに寝て、両手をいっぱいに伸ばす。頭を上げずに、片腕を伸ばしたまま上に上げ、反対の腕を床から離す。そして、両腕を下ろす。腕を真っ直ぐに伸ばしておくこと。すぐに、反対の腕も同様に行なう。両腕交互に20回行なう。じょじょにセットの数を増やしていく。
●ハイパーエクステンション(図10-11)
腰が十分に曲げられ、サポート・パッドが邪魔にならないようにハイパーエクステンション・ベンチ(ローマン・ベンチ)を調節する。
開始と終了の姿勢は図の通り。フィニッシュの姿勢をしばらく保持し、次の反復を始める前に、スタートの姿勢で休止する。
〈バリエーション〉
・フィニッシュの姿勢で、上半身を一方にひねる。
・楽に20回反復できるようになったら、軽いウェイト(5kg程度)を胸にかかえて負荷を増やす。力がついてきたら、胸にウェイトをかかえる
図10-1ハイバーエクステンションの開始と終了の姿勢。力がついてきたら、胸にウェイトをかかえる。
胸
フラット/インクライン(傾斜)ベンチプレス
ベンチに仰向きに寝て、(オーバーグリップで)肩幅よりわずかに広く、前腕が垂直になるようにバーを持つ。まず、ほぼ乳首のところまでゆっくり下ろし、そして、上方へ押し上げる。
フラット・ダンベル・ベンチプレス(自由な重さ)
ベンチに仰向きに寝て、両手にダンベルを持つ。ダンベルを胸の高さに下ろしてから始め、上に押し上げる。前腕が常に垂直になっているように注意する。
(注)セイラーは「引く」動作によって背中上部の筋肉が強化される傾向があるが、胸のエクササイズによってバランスをとることができる。また、脂肪の少ない筋肉の肥大はライティング・モーメントを増加させる上でもいくぶんかの効果がある。上腕三頭筋も同時に鍛えられる。
ハムストリングス
レッグカール(マシン)
マシンにうつ伏せに寝て、足首をローラーにかける。足を臀部に向かって巻き上げ、ゆっくりと最初の姿勢に戻す。一度に両足、あるいは一方ずつ行なう。
ふくらはぎ(下腿三頭筋)
カーフレイズ
段差の角に足裏の半分をかけて立つ。かかとがつま先より下になる位置から始め、つま先立ちの位置まで押し上げ、しばらく保持してからゆっくり下ろす。
シングルレッグ・カーフレイズ
片足立ちでカーフレイズを行なう。
以上のエクササイズを行なうにあたっては、次のような予防措置をとること。
・テクニックを正確に身につけることが重要だ。自信がなければ、資格のあるコーチの指導を受けることをを躊躇してはならない。貧弱なテクニックはケガにつながるかもしれないし、望んだ結果をもたらすことはない。
・呼吸法。力を出す時には吐き出す。
・筋力トレーニングを始める前には、ウォームアップ(ローイングなど)とストレッチをを行なう。望ましい順番は、3〜5分のウォームアップ→ストレッチ→筋力トレーニング→ストレッチだ。
・それに加えて、各エクササイズの前に、普通のトレーニングの半分の負荷で、10回のウォームアップを行なう。
・筋肉痛は1日程度遅れて起こる傾向がある。したがってトレーニング・セッションの間は何ともなくても、後に痛むかもしれない。よい結果を出すためには、わずかに痛い程度にとどめなければならない。動き回るのが大変なほど筋肉の硬直が感じられるならば、エクササイズのし過ぎだ。
・筋力トレーニングによって水上トレーニングを補うことはできる。しかし水上で過ごす時間すべて筋力トレーニングに置き換えることはできない。
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